なぜイタリアの彫刻に裸体が多いのか、そしてその中でも男性器が強調されて描かれているかというご質問ですね。これは、西洋美術史、特に古代ギリシャ・ローマ時代と、それを継承したルネサンス期の思想と深く結びついています。
簡単に言うと、以下の3つの理由が挙げられます。
1. 裸体は「理想の美」と「神聖さ」の象徴だったから
* 古代ギリシャの価値観： 古代ギリシャでは、アスリートの肉体は、精神的な美徳や強さ、知性といった内面の善を反映するものだと考えられていました。外見の美と内面の善は一致するという「カロカガティア（善美）」の思想です。
* 男性の裸体が主流だった理由： 当時、公共の場で裸になるのは男性アスリートであり、彼らの鍛え上げられた肉体は尊敬と称賛の対象でした。そのため、神々や英雄を表現する際にも、完璧な肉体を持つ裸体で表現することが一般的でした。女性の裸体像が登場するのは、男性よりもずっと後のことです。
* ルネサンス期への継承： ルネサンスの芸術家たちは、古代ギリシャ・ローマの文化を「人間中心主義」の理想として崇拝しました。中世を通じて抑圧されていた「人間の肉体」への関心が再び高まり、その美しさを表現するために、裸体彫刻が盛んに制作されました。
2. 裸体は「英雄的で超越的な存在」を示すための表現だったから
* 「ヌ○ド（Nude）」と「ネイキッド（Naked）」の違い： 西洋美術において、裸体を表現する際、単に服を脱いだ状態の「ネイキッド」ではなく、神話や英雄の物語に登場する、理想化された「ヌ○ド」として描かれました。
* 神や英雄の描写： 神や英雄は人間離れした存在であり、世俗的な衣服をまとわない姿で表現することで、彼らの超越性や神聖さを強調しました。例えば、ミケランジェロの『ダビデ像』が裸なのは、単に聖書物語を再現しただけでなく、ゴリアテに立ち向かう英雄ダビデの勇気と、神によって選ばれし完璧な肉体を表現するためでした。
3. 男性器のサイズに対する古代の価値観
* 「控えめなサイズ」が理想とされた： 現代の価値観とは異なり、古代ギリシャでは、大きな勃○した男性器は「愚かさ」や「色欲」の象徴と見なされていました。
* 知的で自制心のある男性の証： 彫刻に描かれる神や英雄は、理性と知性を重んじる存在であり、性欲に振り回されない自制心を持つことが美徳とされていました。そのため、彼らの男性器は、意図的に控えめなサイズで表現されることが多かったのです。
これらの理由から、多くのイタリア彫刻（特に古代ギリシャ・ローマやルネサンス期のもの）では、男性の裸体が、理想的な美、神聖さ、そして知性を備えた存在として描かれました。